MIRAGE GALLERY | ワインと写真#5 楠本涼さん 「アーティストブックと物語への招待」レポート
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ワインと写真#5 楠本涼さん 「アーティストブックと物語への招待」レポート

©Ryo Kusumoto

ワインと写真#5はゲストに楠本涼さんをお迎えし開催しました。

楠本さんが制作されている「連獅子」は、日本舞踊の舞踏家の一生と、芸の継承を取材されたシリーズです。ある舞踏家の生い立ち、師匠から弟子へと受け継がれる現代の継承の形をブックという手段で表現しようとしています。

今回はどのように作品をブラッシュアップしていったのか、その試行錯誤の過程をご紹介いただきました。

 

始まりは1冊の小さなノートから

写真のセレクトを繰り返し、少しずつ改良を加えながら作られたという全15版。

机に並べられたそれらを順に見ていくことで、作家の思考を追体験でき、非常に興味深いものでした。

 

楠本さんは師匠とお弟子さんの人生を一つの演目に落とし込むことで作品として昇華していきます。

リサーチを繰り返し、被写体との対話を重ねることでより作品を深める一方、今まで構成の中心にあった象徴的な舞の写真を除外することを選択します。

それらをまとめた「もう一つの連獅子」が名取洋之介写真賞奨励賞を受賞されます。目的に応じた編集の成功例としても参考になると思います。

 

その後のディスカッションでは最近の本づくりの傾向として、

装置に凝りすぎてしまい、読者が追いつけない。

リサーチを深めることで作者だけがわかったつもりになってしまう。

凝った作りにしようと、作品の中身と装丁のバランスが崩れてしまう。

といった意見やファウンドフォトを用いた作品の是非についての言及もあり、示唆に富んだものとなりました。

 

一切の妥協を許さず、今回の物語の主人公である舞踏の師匠にも認められるほどの楠本さんの真摯な姿勢に多くの学びを得ることができました。

今回ご紹介いただいた楠本さんの最新作は、来年初頭販売予定とのこと、最終的にどのような仕上がりになるのか、とても楽しみです。

楠本さん、特別ゲストとして遠方よりお越しいただいたやまとふみこさん、ご参加いただいた皆様、どうもありがとうございました。

Ayaka Ujikawa